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読了「いまだ下山せず」

久しぶりに読んで疲れる本=パンチのある本だったので・・・
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雪山での遭難を、一人称視点でもなく三人称視点でもなく、捜索する残された仲間という珍しい視点から描いた本作。
少しでも仲間の存在を漂わせる情報にすがるように仲間を追い求め、右往左往する筆者たち。
推測の域を出ない情報を楽観的に受け止めてしまうのが人間の性というのが、痛いほど伝わってくる。

時には不謹慎ながらも笑い転げる風景を織り交ぜながらも、物語は残された者たちの苦悩をとことんディテールに忠実に描いていく。
そんな、「残された者の苦しみ」を徹底的に描く本作だが、その結びでは一転して筆者がそれでも山屋であることを、そして山屋である事の喜びを訴えかける。

現実を知り、熟慮して、そして踏み込め、と言われている気がした一冊。

by yonetch109 | 2010-11-29 18:22 | 雑感